冷凍オムライスを買う。 同じメーカー、同じパッケージ、同じ価格。 開けた瞬間、何かが違う。
重さ?ではない。 感触でもない。 これ、「余白」や。
容器の縁と中身のあいだに、白い空間がぽっかり空いてる。
以前なら縁までぴったり収まってた黄色い塊が、一回り小さくなって底に沈んでいるのだ。価格は変わってはいない。デザインも変化無し。容器も。ただ中身だけが静かに減っている……。
その週、別のネタを書こうとして
「#毎週金曜はおつピザ」というハッシュタグが企業主導で広まっていた。
週5日働いた自分へのご褒美。金曜日を豊かに演出するための装置。このネタ、一瞬書きかけて。やめた。
演出された豊かさより、削られていく実態の方が、圧倒的にリアルだからだ。虚構の豊かさが演出されつつ容器の中身は減り続ける。
「見えない値上げ」という名の縮小
「シュリンクフレーション」という言葉がある。価格を変えずに内容量を減らし、値上げに見えないようにした値上げのことらしい。
「価格が据え置かれたまま内容量が減少する現象は、統計上の消費者物価指数には反映されにくく、実質的な生活水準の低下を見えにくくさせる。」 出典:渡辺努『物価とは何か』講談社現代新書(2022年)
消費者物価指数は「価格の変化」を測る。中身の変化は測らない。だから統計上「物価は安定しているよう」に見えていた時期には、人様の胃袋はずっと小さくなっていたということ、
実感と統計のずれ。それ自体は不思議ではないかもしれない。が、ずれ方がおかしいかも?
「消費者の多数が物価上昇を実感しているにもかかわらず、公表されている統計との乖離を指摘する声が相次いでいる」 出典:衆議院質問主意書(食料品価格の統計と生活者実感のズレに関する質問、要URL補完)
何故か。
統計は「計測可能なもの」しか計測しないはず。容積の変化、タレの濃度の変化、具材の比率の変化——これらは価格指数に入らない。まあこういうのは人間の日常生活での感覚の方が、構造の変化に正確だったということ、
どういうことなのか?
「日本の食料自給率は長期的な低下傾向にあり、国際的な食料・資源価格の変動に対して構造的な脆弱性を抱えている」 出典:農林水産省『食料消費の動向』(最新年度版、要URL補完)
食料自給率はカロリーベースで38%前後。原材料の6割超を輸入に頼っていて、小麦、大豆、トウモロコシ。その国際価格が、気候変動・エネルギーコスト・物流停滞の三重奏で上がり続けている。
「食料安全保障という観点からみると、現在の日本が直面している状況は、価格問題にとどまらない構造的危機として認識する必要がある。」 出典:キャノングローバル戦略研究所「日本で起きる食料危機」(要URL補完)
「輸入依存の食料構造のもとでは、国際価格の上昇が国内の食料安全保障を直撃するメカニズムが固定化されている。」 出典:全労連「食料安全保障の崩壊」(要URL補完)
企業は「同じ価格での維持」のため中身を削る。 個別、各事情やらから見て合理的な判断。批判はできない。
が、全企業が同時にやるとなると?何が起きるか?
はい 人間の「当たり前」の基準が、速く誰も気づかないまま下がっていきます。
認知が理由に追いついていない?!
ゆでガエルの話!!
熱湯に入れたカエルは熱いので飛び出す。水から少しずつ温めたカエルは茹で上がるまで気づかない——という話。科学的には正確ではないらしいです。が、比喩としてはまあ正確。
危機が急激に来たならば人は対応で動くでしょうね? でも段階的に来た場合においては対応の遅れによる後回しが起きうる。
容器が変わらないことが、まさにこれ。同じ容器、同じ価格。でも中身は少なくする。変化のシグナルは商品の中身を開封で確認した時にわかる。パッケージの形からだけでは不明。「変化」に気づくための手がかりが、維持される外形の隠された形によって提供される。
「危機進行速度と認知の乖離」——これ名前をつける価値ある?
容器は変わらず中身は静かに減る。
冷凍食品の話から派生すると。
「安定雇用」という容器の中だと、実質賃金が削られ。 「豊かな老後」という容器の中で、年金の実質価値が削られ。 「世界第3位の経済大国」という容器の中で——
ホンマに世界3位か? ランキング制は実戦だと噛ませポジかも? というか4位でしたね。これ倒し方から見た方が本当の強さがわかるかも?
容器が変わらない限り、人間は「何かがおかしい」と感じながらも、「でも変わっていないし」と動けないままでいる。その状態を、崩壊点と呼ぶ―――のかも?しれませんね。
冷凍オムライスの容器を開けたら、 日本の終わりが見えた気がした。 ホンマか?パンドラの箱か魍魎の匣の類だ。
「気がした」だけかもしれません。 が、そういう感覚は、まあ他の方も似たようなものかもしれません。




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