
なぜ今、「世界の終わり」がこんなに売れるのか
世界観は「影が迫り、均衡が崩れた混沌の世界」。
安全地帯を出ると誰とでも即PVP、
ゲームの外では成立しないような無制限の戦闘が始まる。
まあそういうゲームは珍しくない。
珍しくないどころか、この手のタイトルは増え続けてる気がする。
「気がする」——と調べてみると、ちゃんとデータがあった。
2010〜2024年のあいだに「ディストピア映画」の本数はほぼ倍増し、全映画本数の増加を上回るペースで伸びてる。 — 出典:Parrot Analytics「Dystopian Movies Have Doubled Since 2010」

ゲームも同様で、2020年のポストアポカリプス系モバイルゲームの売上は前年比約106%増。
すべての設定ジャンルの中で最も高い成長率、とされている。
出典:Cult of Mac「Everyone’s playing post-apocalyptic mobile games in 2020」
映画も、ゲームも、アニメも。
「世界が終わる話」は、これだけウケてる。
この時期の理由
10年前も、終末ものはあったような?
が、あの頃は「先がある感」がまだ社会全体にあった気がする。
スマホが普及して、SNSが広がって、
「世界は変わっていくはずだ」という漠然とした期待みたいなものが。
今は違う。
AIが将来の職業消滅を予測し、
人口減少のシナリオは確定しているし、
自分の老後がどういう形になるかすら大体わかってしまう。
「予測可能」になってしまった世界は、逆に「予測不可能感」を失っていく。
つまり——人間はかつては「本物の混沌」を生きていた。
次に何が起きるかわからない世界だ。
今は?まあ以前よりかは何が起きるかがわかってしまうからこそ、「混沌の感触」だけを、仮想の世界に外注するようになったのかも?
産業もそれを知っている
面白いのは、これが無意識の集合行動ではなく、
産業として意図的に選択されてる構造、ということで。
ゲーム、エンタメ、芸能、映画——娯楽産業はほとんどだいたい「混沌・終焉」方向へ向かってる。
実際、経済産業省の「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」では、コンテンツの輸出拡大が国家的な成長戦略として位置づけられている、
出典:経産省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略 中間とりまとめ案」
産業として「ウケる」と判断した結果、末法を量産している。
企業が悪いというよりかは経済性、
ウケたものを選ぶという判断自体は合理的。
結果として「世界の終わり」が社会全体の基調音になっていってる——というだけで。
分裂に、気づいていない
ただ一個、引っかかることもあります。
娯楽産業が「混沌・終末」方向に全力で向かう一方、
社会インフラは逆方向を走っている。
国土交通省のレポートによれば、1960〜70年代に整備された日本のインフラが今後一斉に老朽化し、維持管理コストが急増する。
人口減少と財政制約のなかで、建設後50年以上経過する施設の比率が急増し続けると。

電車は定刻通り来てほしい。
水道は止まってほしくはない。
道路が崩れたら大変。
仮想の世界で世界崩壊を楽しんでいる同じ人間が、
現実のインフラには安定と永続を要求している。
ゲームで世界を終わらせて楽しんだ後に、翌朝電車が止まったら激怒する。
分裂は指摘されようがない。
というか、分裂は広がっていくように見える。
「仮想で済むなら仮想がいい」が成立する世界
数年前なら「現実逃避」という言葉が、かつては批判として機能していた。
今はどうか?
コロナ禍以降、「現実逃避的なメディア利用」が増加したとする研究が複数出ている。
出典:Frontiers in Psychology「Media for Coping During COVID-19 Social Distancing」
が、誰もそれを「逃げだ」と本気で批判しない。
逃げ恥?
というか、できない。
現実が「面白くない苦痛」、
それなら仮想の方がマシやん!
という判断から来てるなら、合理的。
「逃げ」が「通常選択」になった。
それが批判されなくなったので、産業側も設計を変えたように見える。
「仮想の混沌」という体験を、より精度高く提供する方向ですね。
VR市場は2032年には1,230億ドル規模になるとされていて、
出典:Fortune Business Insights「Virtual Reality Market」
「混沌のような虚構」への投資が、続いている。
本物のノイズは必要としなくなった?
ちょっと考えてみます。
本物の予測不可能と、ゲームの混沌は質が違う。
ゲームの混沌はログアウトできるし、リセットも可能。死なない。
それで満足できてるとしたら——人間はもう「本物の予測不可能」よりも、
「ノイズの感触さえ」あればいい生き物に、少しずつなっていってる気がする。仮想でええやん。
が、感触と実物は別物で。
「混沌の感触」に慣れた人間が本物の混沌に直面したとき何が起きるかは——まあ1種の試練やね―――。
CHAOS WORLDが90万人の事前登録を集めている世界で、
国土交通省は静かに老朽化インフラのカウントダウンをしている。
両方とも、社会の中で同時進行している。
でもCHAOS WORLDは韓国の会社では?日本政府との関係性は?ここら辺は完全に個人的な意味合いですが、そもそもの採用理由が「混沌」―――なので深い意味は、無いです。
ともかく
仮想の世界で終わらせた世界の数だけ、現実の世界への期待が積み上がっていく——のかも?


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